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東京高等裁判所 昭和25年(う)230号 判決 1950年11月06日

被告人

田口良一

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

弁護人高垣憲臣控訴趣意第一点について。

然し乍ら或る者の公判廷に於ける供述と検察官に対する供述とが異なる場合に其の孰れを証拠として採用するかは事実承審官たる原審の自由裁量に委ねられるところであること弁護人日比野幸一の論旨第三、第四、第五に対する後段の判断に於て説明した通りであつて本件に於いて原判決が検事作成の被告人の供述調書、宮沢、古屋に対する検事作成の各供述調書、長浜に対する検察事務官作成の供述調書の各記載を証拠として採用したのはこれ等の者の公判廷に於ける供述よりも其の前の供述を信用すべき特別の情況の存するものと認めたが為めに他ならない。而して斯る証拠の取捨判断は原審の専権に属するところであるからこれ等の者の公判廷に於ける供述よりも前の供述を証拠として採用したからと云つて特にこれを採用した理由を判示せなければならないと謂う法則はない。従つてこれを判示しなかつた原審判決には理由不備の違法は存しない。論旨は其の事由がない。

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